春節の中国をゆく(2/3) – 文化風習編

前回に引き続き春節の中国滞在日記。中国の春節には色々な風習があって興味がつきない。特に食事などは地域差もかなり多く、自分は河南省の友人宅と、今回の広東省韶关市でしか春節を過ごしたことがないので、どこまでがその地域に特有か把握し切れていないが、簡単に紹介してみたいと思う。

■ 温泉

春節の時期の中国は寒い。だいたいの家庭には湯船が無く、温かいお湯で体を温めたいので、義父の運転する車で近くの温泉 (wen1quan2) へ。日本でいう健康センターの温水プール的なもの(大池 da4chi2)があって、そこで皆で浸かる。個人や家族単位で貸し切ることができる個室(单间 dan1jian1) もある。「シャワーを浴びる」は洗澡 (xi3zao3) だが、温かいお湯にゆっくりと浸かるのは泡 (pao4) という。「お茶を沸かす」と同じ動詞だ。

■ 農村

旧正月の恒例行事は、普段なかなか揃わない親戚と会うこと。街の中心から離れたところに住む親戚を訪問しに行くが、そこは農村部。今回行ったのは罗围村水口村 というところ。ここには、電気やガス、上水に頼らず、自ら野菜・魚等を栽培して自給自足の生活を営む集落がある。中国の都市部から車で1時間も走ればこういう光景をいたるところで見ることができる。

ここでの主な目的は、年越しに備えた準備、具体的には、家の門に貼る縁起の良い言葉の書かれた掛け軸(对联 dui4lian2)を貼ること。中国に行くと壁に「福」の字が逆さまに貼ってあるのを見ることがよくあるが、これはそれのバリエーション。ちなみに逆さまに貼るのは、中国語の「逆さまの福 倒福 dao4fu2」を、発音が同じ「福がやって来る 到福 dao4fu2」にかけたもの。日本のおせち料理と同じで、中国にはこのような「言葉掛け」が本当に多い。

門の両側に貼るものを对联(dui4lian2)、門の上に貼るのを横联(heng2lian2)という。また、門そのものに貼る守り神の書かれたものは门神(men2shen2)という。ここには、関羽や張飛など、三国志の登場人物を神格化したものが書かれていた。なぜ門に守り神が必要かは後の「爆竹」のところで書く。

对联そのものは、春節の時期になると街中の露天や雑貨屋等で売りだされる。こういった年越しに必要なグッズをまとめて年货(nian2huo4)という。街中では他にも、旧正月の時期の装飾用の花や樹木を売る市場である花市(hua1shi2)が良く見られる。これは特に広東に特有の風習らしい。一番ポピュラーなのが、小さいみかん(橘子 ju2zi)がなった木で、これはお金を表しているらしいが、飲食店などでも多くのところで飾られている。

■ 爆竹

中国の旧正月に欠かせないのが、けたたましい音で鳴り響く爆竹(鞭炮 bian1pao4)である。爆竹を「鳴らす」は 放(fang4)、「点火する」は点(dian3)という動詞を使う。これがまた激しい。

中国の爆竹は、日本でお祭りの時に使われるような、細くて小さくてカラフルなものとは違い、真っ赤で太くて耳を覆いたくなるほどうるさい。小さいものでも 30cm ほどが一連になっていて、手で持つとずっしりしている。大きいものでは大人でないと抱えられないような大きな段ボールにとぐろを巻いて入っていて、伸ばすと数メートルにもなる。もちろん音もそれだけ大きいが、さらに追い打ちをかけるように、一番最後に火薬が多く入っている一層大きい「かたまり」があり、爆発し終わる瞬間に一番大きな音を出す。

爆竹は、旧正月の時期になると街中の雑貨屋等で買うことができる。爆竹や花火(烟花 yan1hua1)を専門に扱う店も出るほどだ。中国では旧正月以外の祭日や、冠婚葬祭の時にも頻繁に爆竹を使うので、そういったニーズは年中あるのだろう。

2月2日の除夕(chu2xi1; 大晦日)の日の深夜、旧暦で年が変わる瞬間には、街のあらゆるところでほぼ同時に爆竹や花火が上がり、街中が爆発音と煙で包まれる様はかなり壮観だ。当然のことながらうるさくて寝られない。まるで戦争中の市街戦のよう(生で見たことないけど)。

実は、この旧正月の時期に爆竹をひたすら鳴らすのにはれっきとした由来があり、この時期になると年兽(nian2shou4; 兽は獣の簡体字)とよばれる鬼が山から民家に下りてきて人を襲うので、火薬で大きい音で追っ払ったという昔の故事なのだそうだ。上で書いた门神もそういった鬼から我が家を守るためのものらしい。鬼は赤い色を嫌う(のと、赤は中国では縁起の良い色とされている)ので、旧正月は、お年玉袋(红包 hong2bao1)、爆竹、对联等の飾り物などを含めてありとあらゆるものが真っ赤である。

年越しの瞬間に皆一斉に鳴らすのは、他の家で追っ払われた鬼が自分のところに来ないようにするためらしい(なので、人よりもさらに大きな音で対抗しようとするのだろうか)。自分も実家の門前(マンションなのに!)で1度やってみたが、かなり腰が引けていたと後からずっと義母にからかわれている(汗

ちなみにこの爆竹や花火で、毎年毎年中国全土では怪我人や火災がかなり発生している(数千件のオーダー)。上海、広州などの都市部では使用の制限の方向に動いている。確かに見ていると危なっかしいなぁと思うが、完全に規制されてしまったらそれはそれでちょっと寂しい気もする。

■ 獅子舞

年が明けて正月1日目(年初一 nian2chu1yi1)には、街中で獅子舞(舞狮 wu3shi1)が見られる。この獅子舞は県政府が開催する正月祝賀イベントの一環で、ごつい男たちが獅子や龍の仮装をして街中を練り歩く。県(县 xian4)の各地区(镇 zhen4)がそれぞれ異なった踊りや衣装を披露する。少数民族のグループ等、変わった衣装で見ていて飽きない。

この獅子舞イベントの見所が、「お年玉争奪戦」である。獅子舞は街を練り歩く途中で、銀行や政府機関の建物など、割と大きな施設の門前に立ち寄る。そこでは、その施設の人々が、門の上の屋根から竹竿を伸ばしてその先にお年玉袋(現金入り)を吊るして待ち構えている。もちろん特大の爆竹もセットで。獅子舞がそこにやってくると、施設の人々は爆竹をひたすら放って追っ払おうとする。獅子舞はその攻撃をかいくぐってお年玉袋に近づき、組体操的に人の梯子を作ってお年玉に手を伸ばす。見事取れればはいおめでとう、最後に一番大きな爆竹を鳴らしてクライマックス。という一連の「ショー」である。施設が大きくなればあるほど派手で、周りには大きな人だかりができる。

■ 道観

年が明けてからの好例イベントのもう一つが、初詣だ。今回の場合は、地元の道观(dao4guan4; guan4 は多音字)、すなわち道教のお寺にお参りに行く。道教と仏教と民間信仰の境はかなり曖昧らしく、知識無しで行くと普通の仏教のお寺と勘違いするかもしれない。

境内では線香をあげてお参りをする。お参り(拜 bai4)の仕方は日本の仏教とも神道とも違う(合唱ではなく手を組んでおじぎ、その後頭を地につける、を繰り返す)

ここでも相変わらず爆竹をひたすら放つおじさんが居たりするので気が抜けない。

■ 親戚

上にも書いたとおり、旧正月のメインイベントは普段なかなか集まれない親戚の大集合である。中国は親戚関係を非常に大切にすることは良く知られており、これがまたにぎやかで楽しい(そして食事とお酒が本当に美味しい!)

この時中国特有の風習が、お酒を注いで回る敬酒 (jing4jiu3) というもの。目上の人にお酒を注ぎ、一緒に盃を交わして乾杯する。この時は、その年の発展や相手の未来を祝福するような言葉を同時に交わす。ポピュラーなのが「恭喜发财 gong1xi3fa1cai2 (商売繁盛、お金が増えますように)」や「身体健康 shen1ti3jian4kang1」など。学生には「学习进步 xue2xi2jin4bu4 (学業上達)」もいい。兎年にちなんで「祝兔年好运发大财」などもアリだと教えてもらったが、自分はこのバリエーションがあまり無くてまだまだ努力が必要だと思う。

中国では基本的には酒は一人では飲まなく、人に「来!来!喝!(ほら、さあ、飲め!)」と言われて飲むか、自分から誘って乾杯して飲むものである。乾杯(干杯 gan1bei1)は文字通り酒を飲み干すことであり、調子に乗って飲んでいるとすぐに酔っ払う。もちろん、強制ではなくちゃんと断り方もある(注がれる時に物理的にブロックしたり!)ので、ちゃんと自制をしたい(自省も込めて)

ひと通り皆で飲み食いした後は、適当に喋ったりトランプ(打牌 da3pai2)をしたり麻雀(打麻将 da3ma2jiang4)をしたり。トランプは拖拉机(tuo1la1ji1; トラクター)と呼ばれる遊びのようだ。次行くときには覚えたい。

あと親戚といえば、中国語は親戚の呼び方が複雑なことで有名で、これが慣れるまで大変。日本語でも「伯父さん」と「叔父さん」で使い分けたりすることがあるようだが、中国語では、「母方/父方の、上から何番目の、おじさん/おばさん」で全て呼び方が違う。例えば、「母方の上から2番目のおじさん」は 二舅(er4jiu4) というし、「父方の年上の一番下の従兄弟」は 小哥 (xiao3ge1)と呼んだりする。ちょうど親の世代は子沢山世代であり、兄弟姉妹が平気で7人も居たりするので、顔と呼び方と発音と自分との関係を覚えるのに慣れるまでかなり苦労する。

皆でひと通り騒いだ後は、毎年恒例の集合写真をパチリ。こうやって毎年家族親戚が健康に暮らせることが一番の幸せなのはどこの国でも変わらない。

あと、旧正月とは関係ないが、結婚した時点で義母と義父の呼び方が変わる(「叔叔阿姨 おじさんおばさん」 から 「爸爸妈妈 お母さんお父さん」になる」)のは慣れないとちょっと決まりが悪い感じがする。「妈!」って普通に呼ぶが、これは日本で言うと義母を「オカン!」って呼んでるような感じ、といえば分かるだろうか。

中国では結婚すると夫・妻どちらにとっても、お互いの家は自分の実家、お互いの両親は自分の両親のような関係になる。なので妻の実家に行くのも「回家 hui2jia1」だ(このあたりの話題をもっと知りたい人はちょっと前の ChinesePod のレッスンを聞いてみると良いかも)。

とりあえず文化風習編はここまで。最後はこれまで意識的に触れなかったグルメ編を書く予定!

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